食事の時のあいさつとして、
食べる前に「いただきます」、食べたら終わったら「ごちそうさま」と挨拶しますね。この2つの言葉、とてもいいと思いませんか。
第一回目の「お家でできる食育コラム」は、「いただきます・ごちそうさま」についてお話ししたいと思います。
私自身は、幼稚園・保育園をよく訪問しますので、たくさんのこどもたちが、みんなで声と、手を合わせて「いただきます」をする姿を見ると、本当に幸せな気持ちになります。
「いただきます」は、とても良い言葉ですが、意味を聞いてみると、
「いつもの習慣だからなんとなく…」という答えが多いです。
ですが、わざわざ「手」を合わせて、「誰(何)」に向かって言っているのだろうと気になり、意味を調べてみたところ、深い意味と、その背景には日本的な美しい文化を考えさせられるお話がありました。
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「いただきます」とは?
「いただきます」とは、漢字で書くと「頂く」です。
文字からそのまま想像しても「いただきます」には感謝の気持ちが込められています。そう考えると、「手を合わせている」姿もとても自然な動作に感じます。
「いただきます」の感謝の意味は 2つあります
- 「食事を作るために使われた食材」に感謝すること
- 「食事が提供されるまでに関わってくれたすべての人」に感謝すること
「食事に作るために使われた食材」に感謝すること
私たちが生きるためには、いつも「何か」を食べています。その「何か」は植物であったり動物であったりします。私たちはさまざまな命に支えられています。
そして、その植物(穀物、野菜、果物など)や動物(肉、魚など)にも「命」があります。
「いただきます」は「○○の命を私の体の栄養にさせていただきます」という感謝の気持ちが込められています。
まだ小さなお子さんに「命をいただいている」ことを説明する際は、植物や魚などをお選びください。これは、動物好きなお子さんの場合、豚さんや牛さんは かわいそうで食べられないと思う場合もありますのでご配慮をお願いします。
「食事が提供されるまでに関わってくれたすべての人」に感謝すること
私たちは毎日、調理された「食事」を食べますが、そのためには、調理をする人はもちろんですが、「食材を提供してくれる人たち」が必要となります。
野菜を育ててくれた人、魚を獲ってくれた人、それを運んでくれる人、お店で販売してくれる人、そして、料理を作ってくれる人。食べるためには、本当にたくさんの方が関わって、皆さんの食卓を支えています。
その食べ物が口に届くまでに、関わったすべての方々への感謝の気持ちが「いただきます」です。
生産者のみなさんと、その食材を店舗などへ運んでくれる人たち
農家さんが穀物・野菜を育て、漁師さんが魚介類をとって、畜産農業者さんが牛乳、チーズ、肉を作ります。
⇒それを「運送業」の方が、卸売市場や販売店に大切に運びます。
※2023年の統計では、日本の農業従事者数は116万⼈、平均年齢は68.4歳(2022年)で、年齢構成は70歳以上の層が ピークになっている。
お店の人たちが、みんなが買いやすいようにしてくれる
スーパーや販売店に届いた食材は、みなさんが買いやすいように、お店の人がパックに詰めて、キレイに陳列して販売します。(食べ物は、このパックされた状態が普通だと思っているお子さんは多いと思います)。
お家の人が、みんなのために買い物や調理をしてくれる
最終的に、お家の人がいつも「レシピを考え」、「買い物に行き(重たい荷物を持って)」、「調理をして」やっとご飯が食べられます。(最後にお皿を洗ったりの片付けも必要です)
感謝の気持ちを込めて、「いただきます」と言えるようになりたいですね。
【お家でできる食育のヒント】
「今日は北海道(産地名)から来た野菜だよ」、「野菜の名前は○○だよ」、「野菜を食べてもらいたかったから この料理作ったよ」など、お子さんと食卓に並ぶご飯についての会話をしましょう。(1分で話せる程度の簡単な会話からスタートしましょう。)
「ごちそうさま」とは?
続いて「ごちそうさま」です。この文字を漢字で書くと「御馳走様(ごちそうさま)」となります。
「馳走」とは、もともとは「走りまわる」「奔走する」という意味です。
これは現在とは違って、昔は食べものが簡単にお店で買えなかったので、お客様が来るとなると、食材の準備に馬を走らせたり、自分で狩りをしたり、走りまわって準備することが必要だったからです。本当に困難なことだったんです。
大変だったからこそ、「馳走」の言葉に「おもてなし」の意味合いも出てきて、さらに丁寧な言葉の「御馳走(ごちそう)」というニュアンスで、贅沢な料理をさすようになったと考えます。
そんな大変な思いをして、食事を用意してくれた人への感謝の気持ちを込めて、食べ終わった際に、「ごちそうさま」とあいさつ(お礼)をするようになった思います。とてもいい言葉ですね。
「いただきます」は日本 独特のあいさつ
海外の食べる前の挨拶を調べてみると…
- イタリア語の「Buon appetito」ブォナペティート(食事をお楽しみください)
- フランス語の「Bon apetit」ボナペティ(召し上がれ)
- 英語圏では、「Let’s eat!」レッツイート(食べましょう)
- ドイツ語の「Mahlzeit」マールツァイト(食事の時間)
- インドネシア語の「selamat makan」スラマッ マカン(食べましょう)
などが見つかりましたが、すべて「食べましょう、食べてください」という意味で日本の「いただきます」とはぜんぜん違います。「いただきます」という言葉は、日本独特のものなのです。
食事を粗末にするということは「命」や「人の思い」を粗末にすることだとあらためて感じました。
普段 何気ない「いただきます」「ごちそうさま」の意味をきちんと理解して、今よりも少しだけ心をこめて言うことは、自分自身の心の栄養にもなると感じました。
たった一食の食事でも、たくさんの方が関わってやっと成り立っています。このことを大切にしたいと思いました。